2014年4月15日火曜日

「食べもの」の本質は関係性 『まんがキッチン』

『まんがキッチン』は食べものという視点から名作少女漫画を読み解くという面白い試みの本なのですが、ここに取り上げられているマンガを全部読んでみたくなりますし、今度からはどんな物語であっても食べものが登場したら最後、その意味を考えずにはいられなくなるという呪いをかけられる危険な本でもあります。

個々の作品の解説や登場する食べものからの深い洞察はとても刺激的で腑に落ちるものなのですが、今回は後半の対談に登場する「食べものの本質は関係性」という著者の意見について考えてみます。

お菓子研究家でもある著者の福田里香さんは漫画家の羽海野チカさんとの対談で
「私は、食べものをおいしいと思う気持ちの80%くらいは結局勘違いと気のせいだと思うんですよね。(中略)。「食べもの」の本質は関係性なんだと思います。」
と言っていますが、この言葉は農業経営者にとってはある意味で呪いのように機能するかもしれません。

人にとっての食べものとは、純粋な味だけで味わうことはできないものであり、関係性の中でのみ味わうことができるものだとするならば、より善いものを生産しようとする努力は本当に意味があるのでしょうか。
もちろんその努力や手間暇自体が関係性を育み、おいしさとして作用する可能性はもちろんあると思います。しかし、大した手間がかけられていない食べものであっても豊かな関係性によっておいしくなるという可能性も当然考えられますし、ある意味では絶対的においしいものを生産することよりもおいしいと感じさせる関係性をつくる方が早いし簡単であるということを考えると、農業経営者としては関係づくりに注力した方がより効率的に消費者に価値を届けることができるのかもしれません。

このことはある意味で、生産努力の否定となるのかもしれません。

もちろん両方を向上させることを目指すのが一番なのですが、私も80%くらいは人間は頭で食べていると思っているので、どちらか選択することを迫られたら、恐らく私はコンヴィヴィアリティを目指すのだろうと思いました。


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