2014年5月1日木曜日

フードを粗末に扱う、という最小の暴力で最大の悪人ぶりを表現できる 『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』

『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』は物語の演出として登場するフードが効率的に印象的に無意識的に鑑賞者をある方向へ導くという仮説を理論化し、もっと深く物語を味わおうと試みるという非常に興味深い考察をまとめた本です。


バナナの皮を踏んで滑って転ぶ、トーストを咥えて走ると曲がり角で素敵な異性とぶつかる、おっちょこちょいが膨らますガムは必ず割れて顔面に張り付くなどなど、どこで読んだか何で観たかは思い出せないけれども絶対知っていると思えるような食べもののシーンはありませんか?

著書ではこういう食べものや食事のシーンをステレオタイプフードと呼んでいますが、著者の提唱するフード理論にはそのステレオタイプフードが非常に重要な役割を果たすのです。


さて、フード理論は基本的に以下の3つの原則から成り立ちます。

1:善人は、フードをおいしそうに食べる
2:正体不明者は、フードを食べない
3:悪人は、フードを粗末に扱う

それぞれに科学と心に基づいた説得力のある論拠があるわけですが、それはぜひ本書を読んでみて納得してみてください。

この本を読むことで、これから鑑賞することになる全ての作品において、食べものや食事のシーンに見入らざるを得ないという呪いを受ける危険性はありますが、それ以上にそれぞれの作品に対する深い理解や感動を得ることができると思います。


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